健康志向が高まる昨今、話題としてもよく見かける【有機農業】に加え、わたしたちの将来の食を考える上で重要な指標となる【食料自給率】について触れていきます。
有機農業の推進を進める動き
健康志向が高まる昨今、話題としてもよく見かける【有機農業】ですが、一般的に行われている農業とはどのような違いがあるのでしょうか。
【有機農業の推進に関する法律】による定義は次のようになります。※有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)
- 科学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
- 遺伝子組み換え技術を使用しない
- 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する
これらを踏まえて作物を育てる農業のことを【有機農業】と呼びます。
この農法のよって生産される【有機農作物,有機JAS】には具体的にどのような対策が基準となるのでしょうか。
- 周辺から使用禁止資材が飛来し又は流入しないように必要な措置を講じている
- 種付け前2年以上化学肥料や化学合成農薬を使用しない
- 組み替えDNA技術の利用や放射線照射を行わない
といった、(有機農産物の日本農林規格)の基準に従って生産された農産物のことを有機農作物と位置付けます。有機JASの認定を受けるにはこれ以外も含めて、諸々条件を満たすことが必要となるのです。
農林水産省は2021年3月に「みどりの食料戦略システム」の中間とりまとめを明らかにし、将来的な展望を示しました。2050年までに化学農薬の使用量を50%、化学肥料の使用量を30%にそれぞれ削減するとともに有機農業に取り組む面積を100万haに拡大するなどの目標を掲げています。国ベースで有機農業に取り組む姿勢が表れており、生活の中でも意識していかなければならない点となっています。
食料自給率を高めるための動き
そもそも、食料自給率とはどのような指標なのでしょうか。
「国内において食料の供給量に対して国内生産の割合を示す指標」と説明されますが、国内で消費する量を国内での生産量でまかなえる場合は100%を超える値となります。100%に満たない場合は国内で消費する量を国内での生産量だけでは足りないことになり、海外で生産しているものを輸入して消費にまわしているのです。
また、食料自給率にはカロリーベースと生産額ベースの2種類の考え方があります。農林水産省のページの解説を下記に引用します。
【カロリーベース総合食料自給率】
食料全体の自給率を考える場合、異なる種類の食料を合算する際の共通のものさしを、食べものに含まれる熱量(カロリー)とした考えで計算したものがカロリーベース総合食料自給率となります。基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目して、国民に供給される熱量(総供給熱量)に対する国内生産の割合を示す指標です。
カロリーベース総合食料自給率(令和2年度)
=1人1日当たり国産供給熱量(843kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,269kcal)
=37%※分子及び分母の供給熱量は、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」に基づき、各品目の重量を熱量(カロリー)に換算したうえで、それらを足し上げて算出しています。
w.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html (農林水産省)
【生産額ベース総合食料自給率】
異なる食料を合算する際の共通のものさしを、食べものの価値(生産額)とした考えで計算したものが生産額ベース総合食料自給率となります。生産額ベース総合食料自給率は、経済的価値に着目して、国民に供給される食料の生産額(食料の国内消費仕向額)に対する国内生産の割合を示す指標です。
生産額ベース総合食料自給率(令和2年度)
=食料の国内生産額(10.4兆円)/食料の国内消費仕向額(15.4兆円)
=67%分子及び分母の金額は、「生産農業所得統計」の農家庭先価格等に基づき、各品目の重量を金額に換算したうえで、それらを足し上げて算出しています。
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html (農林水産省)
農林水産省の直近の発表によると、2020年(令和2年)の日本のカロリーベース総合食料自給率は過去最低の37%、生産額ベース総合食料自給率は67%となっています。
統計データが存在している1965年(昭和40年)はカロリーベース総合食料自給率は73%、生産額ベース総合食料自給率は82%であるため、統計開始後右肩下がりで推移しているのです。
食料自給率の値からも分かる通り、現在日本は6割を輸入に頼っているのが現状です。農林水産省は2030年までにカロリーベース総合食料自給率を45%にまで高めると目標を掲げています。
なぜ、食料自給率は低下しているのでしょうか。
低下した理由として挙げられていることは、日本人の食事が洋風に変化したことが大きく取り上げられます。パンや麺類の原料になる小麦、畜産物の生産に必要な家畜の餌となるトウモロコシ、植物油の原料となる大豆などの作物を十分に生産できなかったのです。その理由・背景として、農地や農家が減少していることや、梅雨や秋雨の時期に必要以上のまとまった雨が降るなどの日本特有の気候が先ほど挙げた作物の生産に不利となり、特定の地域でしか栽培できないことで国内での生産量が必要としている量に満たないために海外からの輸入に頼っているのです。
では、食料自給率を向上させることは可能なのでしょうか。
食料自給率が低い=たくさんの食料を海外に依存しているということになります。別の視点から考えると、世界で食料が足りなくなった際に、必要な量の輸入している食料を確保できなくなるリスクが高まってしまいます。食はわたしたちの生活には欠かせないものであり、必要な量の食料をなるべく確保できるように、食料自給率を高めることは大切なのです。
有機農業と食料自給率の関係性。わたしたちにできることとは。
有機農業、食料自給率について簡単に取り上げたが難しく考えず、有機農法を利用し自宅で家庭菜園を作ったり、ベランダでプランター菜園を実現したりと、そこまで手間をかけずとも様々取り組めるだけの資材はホームセンター等で揃える事ができます。
有機農法でヘルスケアをしながら純国産の食材を楽しむ。古き良きを取り入れ、現代社会で食との関係性を見直しながら生活を送る事もまた必要なのではないでしょうか。街の八百屋さんや青空市場、道の駅の地産地消コーナーを利用して触れていくこともおすすめです。
様々な観点から自給率アップに努め、日本の食事情を進めていくことで変化が生まれていくのです。
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